犬も人間と同様、健康を維持する上で水分補給は欠かせません。
そのため、ワンちゃんの水を飲む量が少ない時は体調が心配になってしまいますよね。
水を飲まないという症状は、何かしらの病気の兆候として現れている可能性もありますので注意が必要です。
この記事では主に下記の内容について紹介していきます。
- 病気以外で犬が水を飲まない5つの原因
- 犬が水を飲まない時に考えられる4つの病気
- 様子を見て良い症状と病院で診てもらうべき症状
- 健康な犬の飲水量
- 飼い主さんができる4つの対処法
後半では病院で診てもらうべき症状の見分け方や、家庭での対処法についても紹介します。
ワンちゃんが水を飲まない時、最適なサポートをしてあげられるよう備えましょう。
病気以外で犬が水を飲まない5つの原因
犬が水を飲まない時、病気以外で考えられる原因は下記の5つです。
- 食事から十分な水分を摂っているから
- 高齢だから
- 怪我で体が痛いから
- 水の状態が気に入らないから
- 気温が低いから
生活環境やワンちゃんの様子で、思い当たる原因がないか考えながら目を通してみてください。
食事から十分な水分を摂っているから
ウェットフード等の水分量の多いごはんを食べていれば、食事から水分を摂取することができます。
すでに十分な水分を取っているために、それ以上水分補給の必要がない状態であることが考えられます。
最近ウェットフードに切り替えた、というような背景があれば、水を飲む量が減った原因となっているかもしれません。
水分不足にはなっていないため、心配する必要はありません。
水を飲まないことを心配されるご家族さまからの相談を受けると、このウエットフードを利用していたり、手作りフードで十分に水分を摂取しているパターンが意外と多くあります。この場合は心配はありません。
高齢だから
犬も高齢になるとあらゆる体の機能が低下してきます。
それによって、自分の喉の渇きに気づきにくくなる、基礎代謝が落ちることで水分を欲しなくなるということがあるのです。
水分補給の機会が減ってしまうということなので、脱水症状を起こさないよう注意する必要があります。
怪我で体が痛いから
体のどこかに怪我をしていて、水を飲むために体を動かすのがつらいため飲水量が減っている可能性もあります。
具体的には、足が痛くて移動したくない場合、首が痛くて器まで頭を下げられない等の理由が考えられます。
体の痛みに関しては怪我ではなく病気が原因の場合もありますので、この後の「犬が水を飲まない時に考えられる4つの病気」の項目も参考にしてみてください。
水の状態が気に入らないから
ワンちゃんによっては、水の温度や清潔さに敏感な子もいます。
冬に冷たい水を出すと飲みたがらない、お水が古かったり埃や毛が浮いているのが気に入らなかったりして水を飲まないことも。
神経質な性格のワンちゃんには、水の状態にも配慮してあげるようにしましょう。
気温が低いから
気温の違いから飲水量が変化することもあります。
夏の暑い日等は犬も水をよく飲みますが、涼しい時はそれほど飲みません。
これは、気温の低下により代謝が落ちることが原因で起こる現象です。
また、舌を出してハアハアと呼吸するパンティングという行動も減るため、唾液から水分が発散することがなくなり、水を飲む量が減るのです。
犬が水を飲まない時に考えられる4つの病気
犬の飲水量が減った時、原因として考えられる病気は主に下記の4つです。
- 歯周病
- 口内の腫瘍
- 椎間板ヘルニア
- 内臓疾患
症状の特徴などを把握し、ワンちゃんに当てはまる症状が出ていないかチェックしてみてください。
歯周病
歯周病では、歯の表面に付着した歯石が歯と歯茎の間に入り込み炎症を起こします。
それにより口内に痛みや違和感が生じ、水を飲まなくなるのです。
ワンちゃんの歯の状態を見て、白っぽい塊が歯を覆っていないか確認しましょう。
また口から腐敗臭のような臭いがする時や、歯がグラグラしている時も歯周病の可能性があります。
犬の口が臭い原因とは?臭いからわかる犬の体調と口臭対策も紹介
口腔内の腫瘍
口腔内の腫瘍による口の中の違和感が原因となって、水を飲まなくなっている可能性もあります。
口腔内腫瘍には悪性のものもあり、その場合は口腔内の粘膜や歯肉だけでなく、骨組織まで破壊されることも。
歯周病と同じように腐敗臭が生じ、口の周りの痛みが出ます。
また食欲が落ちる、食べこぼしが増える等の症状が見られる時にも口腔内腫瘍が疑われます。
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアのような強い痛みを伴う病気を発症している場合、体を動かすのが辛くて水を飲めなくなります。
椎間板ヘルニアの場合、頭を下げたり腰を丸めたりすることで、背中や首に激しい痛みが出ます。
できる限り体を動かしたくないため、ごはんを食べに行くのも最低限、水はよほど喉が渇かない限り飲まなくなります。
放置して重症化すると、水だけでなくご飯も食べられなくなるなってしまうことも。
背中や首を動かすと鳴いている、という時は、椎間板ヘルニアを患っている可能性が高いです。
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急性腎障害
急性腎障害では、数時間から数日のうちに腎臓の働きが低下します。
尿をつくる機能が低下するため排尿量が減り、その結果水を飲む量も減ります。
短期間のうちに無尿、乏尿、下痢、嘔吐、食欲不振等の症状が見られ、重症になると痙攣をおこすなど、命にかかわる危険な病気です。
様子を見て良い症状と病院で診てもらうべき症状
水を飲むことが減ったからといって、病院に連れて行くのは大げさでは…と迷ってしまうこともあるでしょう。
ここではひとまず様子を見ていい症状と、なるべく早く病院で診てもらうべき症状について解説します。
ワンちゃんの症状と照らし合わせながら目を通してみてください。
体調不良から飲水量が減っている場合は、飲水量の変化よりも先に、元気や食欲の減退、動きたがらないなどの症状が先に目がつくと思います。様子を見ずに速やかにかかりつけの獣医師に相談しましょう。
様子を見て良い症状
水を飲まなかったとしても、ごはんをしっかりと食べている場合は基本的に心配いりません。
2~3日程度は様子を見ても大丈夫でしょう。
ただ夏の暑い時期の場合は、体から出ていく水分が多いため普段以上に水分補給が必要です。
夏場に水を飲まなくなった場合は、あまり様子を見ず動物病院で相談することをおすすめします。
病院で診てもらうべき症状
長く水分を取らないでいると犬も脱水を起こし、放置すると心臓に負担がかかります。
さらに悪化すればショック状態を引き起こし、最悪命にかかわる危険な状態に。
また、内臓にまで影響が出て多臓器不全を起こすこともあるため、脱水症状が出ている時は様子を見ずに動物病院へ連れていきましょう。
犬の脱水の症状
犬の脱水症状を見極めるポイントは下記の通りです。
- 鼻や舌が乾いているように見える
- 皮膚が普段よりも硬い
ワンちゃんの皮膚をつまんでみて、放した時に皮膚が伸びた状態が2~3秒続くようであれば、かなり脱水しているといえます。
鼻が濡れていなかったり、口元が乾いていたりする時も脱水のサインである可能性があるので注意しましょう。
健康な犬の飲水量
健康な犬の1日当たりの飲水量は、体重1㎏あたり50~60mlです。
ただしあくまで目安ですので、条件によっては飲水量がそれ以上かそれ以下になることもあります。
例えばたくさん運動した時は水を飲む量が増える、水分の多い食事をとっている時は水を飲む量が減るということもあります。
目安を参考にしつつ、普段からワンちゃんの飲水量に注目して適正量を判断しましょう。
飲水量の測り方
飲水量を量りたい時は、ペットボトルを使うのが手軽です。
ペットボトルに飲み水を入れ、そこから器に分けてワンちゃんに与えます。
1日の終わりに、器に余った水とペットボトルに余った水の重さを量れば、ワンちゃんの飲水量がわかります。
水は1mlで約1gですから、軽量した数字をそのままmlに置き換えて大丈夫です。
飲み水を交換する際は、余った水も捨てる前に忘れず量っておきましょう。
飼い主さんができる4つの対処法
ワンちゃんの水を飲む量が減った時、飼い主さんができる主な対処法は下記の4つです。
- 水分量の多いフードを与える
- 清潔な水が飲めるよう工夫する
- 水飲みスペースを増やす
- 歯磨きの習慣化
お家でできる対策は、基本的には水分不足にならないための予防の意味合いが強いです。
怪我や病気が原因の場合、根本的な解決にはならないことも。
家庭でできるケアを行いつつ、怪我や病気を疑うべき症状が見られる時には病院で相談するようにしましょう。
水分量の多いフードを与える
水は飲まないがごはんは食べる、という場合には、水分を多く含むフードを与えてみましょう。
市販のウェットフードを与えてもいいですし、ドライフードをふやかしてあげるのも一つの方法です。
ウェットフードの中にはおやつ用やトッピング用のものも多いので、ドライフード+水分量の多いトッピング、のように組み合わせるのも良いでしょう。
もし主食で使うなら、栄養が偏らないよう「総合栄養食」と記載のあるものを選ぶのがおすすめです。
犬用ウェットフードのおすすめランキングTOP10!ウェットフードの選び方
清潔な水が飲めるよう工夫する
ワンちゃんに与える水は最低でも1日1回は交換しましょう。
また気温が高い、汚れが入ってしまっている等、条件によっては複数回交換してあげる必要がります。
水を入れている器もこまめに洗ってあげるようにしましょう。
抜け毛や埃をフィルターが受け止めてくれるような自動給水器を使うのもおすすめです。
神経質なワンちゃんの場合、毛やゴミが浮いていたり水が劣化していたりするのが気になって飲まないということがあります。
いつでも清潔な水が飲めるよう工夫してあげることが大切です。
水飲みスペースを増やす
ワンちゃんが高齢になり水を飲まなくなったという時は、水飲みスペースを数か所に増やしてあげると良いでしょう。
わざわざ大きく移動しなくても、近くの水飲み場から気軽に水分補給できるようになります。
手軽に水を飲める環境をつくってあげることで、シニアのワンちゃんが水を飲むことのハードルを下げることができます。
歯磨きの習慣化
歯周病による口の中の痛みや違和感から、水を飲まなくなる子もいます。
もし普段あまり歯磨きをしてあげることがない場合、この機会にトレーニングを始めてみるのも良いでしょう。
歯磨きのしつけは成犬になってからでも決して遅くはありません。
ただ、すでについてしまった歯石を家庭でのケアで落とすのは難しいです。
ワンちゃんの口の中を見て、白っぽい塊が歯を覆っているようであれば歯垢が固まって歯石になってしまっていると考えられます。
一度動物病院で歯垢除去の処置を受けてから、ホームケアを始めることをおすすめします。
普段から愛犬の飲水量を把握しておこう
健康な犬でも、食べているごはんのタイプや運動量等のコンディションによって飲水量が減ることもあります。
普段からワンちゃんの飲水量をある程度把握し、変化があればいち早く気づけるようにしておきましょう。
水を飲むことは健康を守るため、命を守るために欠かせないことです。
紹介したような家庭でできる対処法も取り入れつつ、異常が見られた時には早めに動物病院で見てもらうようにしましょう。
定期的に測定をしておくと、季節による飲水量の変化に気づくことがあります。夏は不感蒸泄といった尿や便以外からの水分の喪失が増え、冬はそれが少ないためです。様々な時期で飲水量のチェックをされておくと、診療時に役に立ちます。
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