犬が下痢をした時は、どこか体が悪いのかと心配になってしまいます。
自宅でのケアで改善できる場合もありますが、病気が原因で病院での治療が必要なケースもあるため注意が必要です。
この記事では主に下記の内容について紹介していきます。
- 病気以外で犬が下痢をする3つの原因
- 犬が下痢をする際考えられる病気
- 様子を見ていい下痢と病院を受診すべき下痢の症状
- 家庭でできる2つの対処法
- 下痢の予防法
後半では家庭でできる対処法についても紹介しています。
下痢をしてしまった犬に適切なサポートをしてあげられるよう備えましょう。
電話番号:03-58298829 (あさくさばし動物病院)
病気以外で犬が下痢をする3つの原因
病気以外で犬が下痢をしてしまう原因は、主に下記の3つです。
- フードが合わない
- 誤飲・誤食
- ストレス
原因が病気でない場合は、家庭でのケアで改善できるケースも多いです。
まずはそれぞれ詳細を見ていきましょう。
フードが合わない
- 体に合わないフードを食べさせる
- 普段食べないものを食べさせる
これらが、下痢の原因となることがあります。
例えばその子の体質で特定の食べ物がうまく消化できない食物不耐性というものがあります。
毎回同じもので下痢をするようならその食べ物は避けましょう。
他にも、開封から時間がたって劣化したフードを食べたことで、お腹を壊してしまうこともあります。
古いフードには、脂分が酸化していたり、毒素を作り出す微生物が繁殖していることがあるため注意しなくてはいけません。
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誤飲・誤食
食べ物以外のものを誤って飲み込んでしまうと、消化できずに下痢をしてしまうことがあります。
飲み込んだものの大きさによっては腸閉塞を引き起こすことがあるため、誤飲が疑われる場合は早めに動物病院で診てもらいましょう。
また、玉ねぎやチョコレート等犬が食べてはいけないものを盗み食いしてしまうことで、中毒症状が出ていることも考えられます。
犬が届く場所にそういった食べ物を置いてしまっていたら、中毒の可能性も視野に入れ早めに病院に行きましょう。
ストレス
犬も人間のように、ストレスが溜まると体調に影響してしまうことがあります。
犬の体にストレスがかかると、ホルモンバランスが変化します。
それが結果として腸にまで影響し、下痢を起こす原因になることがあります。
犬が下痢をする際に考えられる7つの病気
犬が下痢をしている時、原因として考えられる病気は下記の7つです。
- ウイルス感染
- 細菌感染
- 寄生虫感染
- 腸の腫瘍
- 炎症性腸疾患
- 出血性胃腸炎
- 膵外分泌不全(すいがいぶんぴつふぜん)
病院が原因の場合は、基本的に家庭でのケアではなく病院での治療が必要になります。
犬に当てはまる症状が出ていないかチェックしながら、目を通してみてください。
ウイルス感染
犬の下痢を引き起こすウイルスには、パルボウイルス、犬ジステンパーウイルス、犬コロナウイルスなどがあります。
この犬コロナウイルスは、世界で流行している新型のコロナウイルスとは別のウイルスです。
免疫力の弱い子犬やシニア犬は重症化しやすく、最悪命を落とすこともあります。
特に複数頭で同じ症状が出ている場合は感染症である可能性を考えて早めに病院にいきましょう。
細菌感染
細菌による感染症で、以下の細菌が原因として考えられます。
- 大腸菌
- サルモネラ
- カンピロバクター
- クロストリジウム
こられの細菌が腸内でバランスを保てなくなったり、病原性の細菌が異常増殖することで下痢を起こします。
細菌は人に感染する恐れもあるため、便の処理は必ず衛生的に消毒し手洗いなどを徹底しましょう。
僕たち獣医師は色々な情報から原因をしぼりこんでいきます。下痢の期間・色や形状・臭い・頻度・環境の変化・食事の変化・その他併発している症状(嘔吐や食欲の有無)などはとても大事な情報になりますので獣医師に伝えてみましょう。
また、病院に行く際には必ず便は持っていき、便検査を行なってもらいましょう。
寄生虫感染
犬の下痢を引き起こす寄生虫は様々で、回虫、鞭虫、条虫、ジアルジア、トリコモナス、コクシジウム等が主に考えられます。
- 最近特定多数の犬と触れ合った(ドッグラン、ペットショップなど)
- 他の犬の糞を舐めたり食べたりした
これらの後に下痢をしている場合には、寄生虫に感染していることもあります。
腸の腫瘍
腸内に腫瘍ができることで下痢を引き起こしている可能性も考えられます。
腸にできる腫瘍にはリンパ腫、腺癌、平滑筋腫(へいかつきんしゅ)、平滑筋肉腫などがあります。
腫瘍が原因の場合、手術が適応になる場合が多いです。
リンパ腫の場合は所見や状況によって手術と抗がん剤を併用したり、抗がん剤のみで治療する場合があります。
画像検査や細胞診検査や病理検査を組み合わせて診断します。
胃腸の腫瘍は、高齢犬に多く、比較的慢性的な経過で、対症治療で中々良くならず体重減少なども伴っている場合が多いです。近年の超音波検査機器の性能の向上もあり診断精度も高くなってきています。
飼い犬が高齢で中々下痢が良くならない場合は超音波検査や血液検査などの精査をすることをお勧めします。必要があれば細胞診や内視鏡検査なども行い腫瘍の種類を診断して治療に繋げます。
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患では、腸の炎症によって慢性的に消化器に負担がかかります。
慢性的な経過を辿ることが比較的多いです。
腸粘膜が異常な免疫反応を起こすことが要因といわれていますが、明確な原因は解明されていません。
長期に渡る内科治療で改善できることが多いですが、重症化した場合は死に至るケースもあります。
出血性胃腸炎
詳しい原因はまだわかっていませんが、甚急性に吐血や血様下痢を呈します。
下痢に血が混じったり、嘔吐したりすることもあり、数時間で重症化する緊急度の高い病気でもあります。
出血量の多い下痢が見られる時は、早急に動物病院を受診することをおすすめします。
膵外分泌不全(すいがいぶんぴつふぜん)
膵外分泌不全とは膵臓の機能が低下する病気の一つです。
ただし、膵外分泌不全は稀に起きる病気です。
膵臓で十分な消化酵素が生成されず、うまく食べ物を消化できなくなります。
白っぽい便が出たり、食欲はあるのに体重が落ちたりという時は要注意です。
様子を見ていい下痢と病院を受診すべき下痢の症状
犬が下痢をしても、すぐに病院へ行くのは大げさだろうかと悩んでしまうこともあるでしょう。
ここではひとまず様子を見ていい下痢と、早めに病院を受診すべき下痢の症状をそれぞれ紹介しています。
様子を見ていい症状
「下痢はしているものの、元気食欲があり他に変わったところがない」という場合には、ひとまず様子を見ても良いでしょう。
嘔吐があった場合も、一回のみでその後は落ち着いているという状態であれば緊急性は高くないでしょう。
ただ、2日以上このような症状が継続して見られるようなら病院で診てもらいましょう。
病院を受診すべき症状
下記のような症状が見られる時は、できるだけ早く動物病院へ連れていくことをおすすめします。
- 血便がある
- 下痢や嘔吐を繰り返している
- 白っぽい便をしている
- 体重が減っている
- 元気・食欲が低下している
- タール状の便がでる
これらの症状が見られる場合には、病院での治療が必要な病気のサインということがあります。
また子犬や老犬の場合は体力が少なく免疫力も弱いため、放置することで重症化のリスクが高くなります。
特に早期発見が大切になりますので、迷った場合は病院へ連れて行くのが確実です。
成犬で下痢が急性で元気・食欲もある場合は緊急性が高くないことも多いです。その場合は食べ慣れた消化の良い物を与えて様子を見てみましょう。
しかし、愛する我が子が急に下痢をしても様子を見ていいのかどうかの判断は難しいと思います。軽度な下痢だとしても病院を受診すること自体は間違ったことではないのでご心配でしたら迷わず病院にいきましょう。
家庭でできる3つの対処法
犬が下痢をしてしまった際の、家庭でできる対処法について紹介していきます。
飼い主さんができる主な対処法は下記の3つです。
- 安静にする
- 他の犬から隔離する
- 食べ慣れた消化の良いものを与える
なぜそのような対策が必要なのかを把握したうえで、実践してみましょう。
安静にする
下痢をすると犬も体力を消耗します。
症状が落ち着くまでは散歩を控え目にして、なるべく安静に過ごすようにしましょう。
他の犬から隔離する
下痢の原因が感染症の場合、便に触れたり犬同士が接触したりすることで同居犬に感染してしまうこともあります。
多頭飼いしている家庭では、下痢をしている犬は隔離して接触させないようにすると良いでしょう。
消化の良いものを与える
消化の良い普段から食べているものを適量与えるようにしましょう。
下痢の予防法
犬の下痢の主な予防法は下記の4つです。
- 食べ慣れたものを適量与える
- ワクチンの定期接種・定期駆虫を受ける
- ストレスを遠ざける
- 誤飲・誤食を防止する
順番に紹介していきます。
食べ慣れたものを適量与える
食べ慣れないものを与えたりするとうまく消化できなくて下痢をしてしまうことがあります。
基本的にご飯は食べ慣れている消化の良いものを与えましょう。
普段食べないものをあたえて下痢をした場合はその食べ物は今後は避けましょう。
下痢が慢性的で他に大きな原因がない場合には、普段食べている食事が食物アレルギーのアレルゲンになってしまっている場合があります。
この場合は獣医師の指導の下、ご飯の変更も検討しましょう。
また、開封から時間が経った劣化したフードをあげていた可能性がないか、フードの保存方法を見直してみましょう。
保存がききやすいドライフードでも、基本的に開封後は1か月以内に食べきるのが理想です。
ワクチンの定期接種・定期駆虫を受ける
ウイルス性の下痢の場合、ワクチンの定期接種によって予防ができます。
また寄生虫感染の場合は、定期駆虫を受けることで予防になります。
定期的に動物病院にかかり、検診を受けると良いでしょう。
ストレスを遠ざける
ストレスが原因で下痢を起こしている場合、まずは犬が何にストレスを感じているか特定してあげる必要があります。
大好きな飼い主さんとのコミュニケーション不足、運動不足、引っ越しなどの環境の変化等、何か思い当たるものがないか振り返ってみましょう。
普段から犬の様子をよく観察し、これかな、というものが見つかればできるだけ改善してあげるようにしましょう。
誤飲・誤食を防止する
拾い食いの癖がある犬の場合、お散歩などでむやみにものを口に入れてしまわないようにする必要があります。
またお家にいる際は床に置くものを最低限にして、生活環境をこまめに整理整頓、掃除をすることで、犬が異物を口に入れることを防止することができます。
異物(消化できない物)の誤飲はまだ胃の中にある場合は催吐処置(形状によっては推奨されない)や内視鏡による除去などで手術を避けられる場合があります。
中毒物質の誤食は早めに催吐処置したり胃洗浄することで中毒物質の吸収を少なくできます。
これらは早めに行うことでより効果的になので誤飲・誤食が確定的もしくは強く疑われる場合はなるべく早く病院にいきましょう。
毎日の便の状態を確認しておこう
犬の便には健康状態がよく現れます。
普段から犬の便の状態をチェックする習慣をつけることで、体調の変化にもいち早く気づけるようになるでしょう。
もし病気の兆候がある時、早期発見と早い段階での治療が何より大事になります。
病院に連れて行くべきか判断しづらいこともあるかもしれませんが、迷った時には病院で相談するようにしましょう。