【獣医師監修】犬の血液型の診断方法!種類や性格との関係も解説!

もしもに備えて知っておきたい犬の血液型について!血液型の検査方法も紹介! 犬のコラム

実は犬にも血液型があります。

人間のように血液型で性格などを判断できるのかな…と気になっている人もいるかもしれませんね。

また、ワンちゃんのもしもの時のためにも、血液型をあらかじめ知っておくことには意味があります。

この記事では下記のことをメインに紹介していきます。

  • 犬の血液型を知っておくメリット
  • 犬の血液型の分類について
  • 犬の輸血について
  • 犬の血液型の調べ方
  • 犬の血液型と性格の関係

ワンちゃんを飼っている方はこの機会に犬の血液型について知ることで、もしもの時の備えやトラブルの予防にもつながります。

大切な家族の一員であるワンちゃんとの今後のためにもぜひ参考にしてみてくださいね。

この記事の監修者
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動物病院京都 院長
小川 修平 先生
京都府宇治市出身。2017年大阪府立大学獣医学科卒業後、動物病院京都 本院にて勤務を開始する。2020年に分院である「ねこの病院」副院長を経て2021年より動物病院京都本院の院長に就任する。JAHA認定総合臨床医取得。趣味はスポーツ観戦(中日ドラゴンズと京都サンガを応援しています)、好きな食べ物は白子と日本酒です。

犬の血液型を知っておく3つのメリット

愛犬の血液型を知っておくメリット

犬の血液型を知っておくことのメリットは大きく分けてこの3つです。

  • いざというとき安全な輸血を受けることができる
  • ドナーとして輸血用の血液を供給できる
  • 新生児溶血を予防することができる

ここから一つずつ詳しく説明していきます。

いざというとき安全な輸血を受けることができる

犬の血液型を調べる検査キットは、病気の状態で採取した血液では性格な判定をするのが難しいことがあります。

いざワンちゃんに輸血の必要が生じた時、できれば直前ではなく事前に血液検査をして正確な血液型がわかっていたほうが安心ということですね。

もしもの時安全に輸血を受けるためにも、ワンちゃんの血液型を把握しておくのがおすすめです。

ドナーとして輸血用の血液を供給できる

ワンちゃんの血液型を知っておくことで、輸血を受けるときだけでなくドナーとして血液を供給することもできます。

血液型が適合する他のワンちゃんへ輸血を行い、その命を助けることができる可能性があります。

新生児溶血を予防することができる

新生児溶血とは、母親と生まれた子供の血液型の組み合わせによって、母親の初乳を飲んだ子犬が溶血反応を起こしてしまうことを指します。

最悪の場合数日で、死に至ることもあるため注意が必要です。

新生児溶血の予防については記事の最後に詳しく説明しています。

犬の血液型の分類

犬の血液型の分類

人間の血液型の主な分類方法は「ABO式」「Rh式」などですよね。

A型、B型、O型、AB型、そしてRh(+)、Rh(-)のように分類されます。

対して犬の血液型の主な分類方法は「DEA式」。

DEAとはDog Erythrocyte Antigensの略で、犬血球抗原という意味です。

国際的に認められている犬の血液型は13種類。

DEA1.1型、DEA1.2型、DEA3、DEA4…のように分けられ、それぞれ(+)か(-)か、つまり抗原を持っているかいないかで血液型が決まります。

犬は1匹で複数の血液型を保有している

人間は一つの血液型しか持ちませんが、犬は1匹で複数の血液型を保有しています。

そのため人間のように「私はO型」というようなシンプルな血液型にはならず、「DEA1.1(+)or(-)、DEA1.2(+)or(-)、DEA3(+)or(-)」のように複雑な血液型になります。

犬にも輸血ができるが注意も必要

輸血はできるが注意が必要

怪我や病気になった時などは、犬にも輸血をすることができます。

ただ人間と同じで、犬の血液であればなんでもいいというわけではないため注意しなくてはいけません。

適合しない血液を輸血すると副反応が起こる可能性が高い

輸血をする際に適合しない血液を使ってしまうと、体内で副反応が起き逆にワンちゃんの命を危険にさらしてしまうことがあります。

具体的にはショック症状が起きたり、急性腎不全などの重篤な症状が起きたりすることがあります。

血液の不適合が原因で副反応を起こさないためにも、輸血前の血液検査が重要なのですね。

小川院長
動物病院京都
小川 先生
輸血を実施する際には事前に検査を実施し副反応が起きないかを予測します。
それでも予期しない副反応が起こることがあります。副反応を把握するために輸血は徐々に投与速度を速くするとともに、10分に1度程度「呼吸数・心拍数・体温」をチェックして行います。

DEA1.1の抗原が(+)か(-)かが重要

犬の輸血をする際には特に、DEA1.1の抗原が(+)か(-)かが重要になってきます。

DEA1.1(+)の血液をDEA1.1(-)に輸血すると、急性溶血反応を引き起こす可能性があります。

ただその逆の場合は問題なく輸血することができます。

基本的にDEA1.1の抗原が(+)か(-)かがわかっていれば、輸血時に問題なく治療を進めていけるといわれています。

DEA 4は「万能血液」と呼ばれている

犬の血液型の中でも、DEA 4は比較的どの血液に対しても抗原抗体反応を起こしにくいということがわかっています。

人間でいうところのO型のように輸血を行いやすいことから「万能血液」とも呼ばれています。

輸血が必要になる場面

輸血が必要になる場面

輸血というと大出血したときに必要というイメージがありますが、それ以外にも輸血による治療が必要な場面はあります。

では出血以外で輸血が必要になる場面を2つ紹介していきます。

血を作る機能が低下している時

免疫介在性貧血、造血機能不全等、血液をつくる力が弱まることで貧血状態になってしまった時などに、輸血は有効です。

もちろん出血をした際もそうですが、血液そのものが不足している時に輸血を行います。

小川院長
動物病院京都
小川 先生
出血以外では免疫介在性溶血性貧血という病気は、急激に赤血球が破壊され貧血が進行します。
そのため輸血が必要な可能性が高いです。破壊された赤血球の色素がおしっこに排出されるので赤褐色のおしっこになるので注意が必要です。

病気などで血液中のある種の成分が欠乏している時

血小板減少症のように血液成分の中の血小板が不足する、または血液を固める凝固因子が欠乏するときなども輸血をすることがあります。

血液自体が足りないのではなく、血液の中に含まれるある種の細分に欠乏が見られる時などでも輸血が必要となることがあるのですね。

日本にはペット専用の血液バンクがない

日本でのペットの医療事情

ペット医療が進んでいるアメリカなどではペット専用の血液バンクがありますが、日本には残念ながらこのような血液バンクがありません。

そのため、動物病院よって血液の入所方法も様々です。

病院で飼っている供血犬かボランティアで血液をもらう

動物病院では供血犬や供血猫を飼っているところもあり、輸血が必要な時は供血動物から血液をもらって使います。

ただそれでも血液が足りなかったり、適合する供血動物がいなかったりすることがあります。

その際には、他の病院にかけあうか病院に来た飼い主さんに協力してもらいボランティアで輸血をお願することもあるのが現状です。

小川院長
動物病院京都
小川 先生
人間においても輸血用の血液が不足しているのと同様に、犬でも輸血用の血液は基本的に不足しています。
いざというときのためにかかりつけの動物病院に輸血が必要な際は、供血犬がいるのか、自身で供血犬を探すのか、また必要になった際に声をかけられるワン友さんがいるか、など確認しておくといざというときにスムーズです。

犬の献血ドナーの条件

犬の献血ドナーになるためには、一般的に下記の条件を満たしている必要があります。

  • 持病がないこと
  • 10日以上前にワクチン接種を受けていること
  • 8歳未満であること
  • 体重25㎏以上で肥満でないこと
  • 感染症や寄生虫症にかかっていないこと
  • 特殊な薬物療法を受けていないこと
  • DEA1.1、1.2、3、5、7以外であること
  • 輸血歴、妊娠歴がないこと
  • ヘマトクリットが40%以上であること

※ヘマトクリットとは全血液成分のうち赤血球が占めている容積のこと。

こういった条件は、献血に協力してくれるワンちゃんが体調不良にならないためのものでもあるのです。

ドナー登録に特典を用意する動物病院もある

動物病院によっては、ドナー登録してくれたワンちゃんに対して得点を用意しているところもあります。

例えばドナー登録時の健康診断や血液検査を無料でしてくれる、実際に輸血用の採血に協力してくれた際には次回の混合ワクチン接種を無料にしてくれる等。

ドナー登録に興味のある方は一度動物病院に相談してみましょう。

犬の血液型の調べ方2選

犬の血液型の調べ方

犬の血液型を調べる方法は、以下の2つです。

  • 血液型判定キットで調べる
  • クロスマッチテスト(交差適合試験)で調べる

血液型判定キットで調べる

犬の血液型を調べるためには専用の検査キットを使って動物病院で検査をします。

少量の血があれば検査ができ約2分程度で結果が出ます。

検査キットで調べるのはDEA1.1の抗原が(+)なのか(-)なのかです。

最も抗原抗体反応を起こしやすいDEA1.1の判定結果が輸血の際重要になるからですね。

クロスマッチテスト(交差適合試験)で調べる

クロスマッチテスト(交差適合試験)は血液型を判定するというよりは、輸血しても問題ないかどうか血液同士の相性を見るテストのことです。

輸血する側とされる側の血液を混ぜ、固まってしまうと相性が悪い、固まらなければ相性が良いという風に判断します。

ほとんどの動物病院では血液型判定キットとクロスマッチテストの両方を行い安全に輸血ができるよう確認してくれます。

血液型と性格は関係ない

人間がよく血液型占いをするように、犬も血液型によって性格を判断できるのかなと気になる方も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、犬の血液型は正確には影響しないといわれています。

犬の性格は子犬の頃の過ごし方、育った環境、または犬種による影響が大きいようですね。

犬用の人工血液も開発されている

動物医療の需要が増していく中で、輸血両方の環境整備がまだまだ不十分であることが問題視されてきました。

そんな中、中央大学理工学部と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究グループが、2016年に犬用の人工血液の合成と構造解析に成功したことを全世界に向けて発表しました。

人工血液の特徴は長期保存が可能なことと、血液型がないことです。

つまりは輸血前に血液の適合検査をしなくてもよくなり、献血ドナーも必要なくなるということです。

人口血液はまだ実用化には至っていませんが、製薬会社などとも連携を取りながら実用化に向けての取り組みが進められています。

新生児溶血とは

新生児溶血の定義と予防法

冒頭で説明していたように、新生児溶血とは母親と生まれた子供の血液型の組み合わせによって、母親の初乳を飲んだ子犬が溶血反応を起こしてしまうことを指します。

また溶血反応とは、ドナー(この場合母犬)の持つ抗体がレシピエント(この場合子犬)の赤血球を攻撃してレシピエントの血液が破壊されてしまうことです。

最悪の場合数日で死に至ることもあるため、安全な子育てのためにも予防策について知っておきましょう。

新生児溶血の予防法は2つ

新生児溶血を予防する方法を2つ紹介します。

1つ目は交配の時点で、父犬DEA1.1(+)、母犬DEA1.1(-)の組み合わせを避けることです。

上記の組み合わせから生まれた子犬の血液型はDEA1.1(+)となり、母犬の初乳を飲むことで溶血反応が起こることがあります。

2つ目は生まれた子犬をすぐ母犬から離し、人工乳を与える方法です。

父犬DEA1.1(+)、母犬DEA1.1(-)の組み合わせから生まれた子犬でもこの方法であれば、新生児溶血を予防することができます。

まとめ

まとめ

犬の血液型について知っておくことのメリットと血液型検査の方法について紹介しました。

ワンちゃんを飼っている方はこの機会に血液型についても把握しておくことで、もしもの時の備えやトラブルの予防にもつながります。

大切な家族の一員であるワンちゃんとの今後のためにもぜひ参考にしてみてください。

また、日本ではまだまだ輸血システムが整っていないこともあり、ドナー登録に特典を用意するなどして動物病院などが協力を呼び掛けています。

一匹でも多くのワンちゃんの命を助けるために、この機会にぜひドナー登録を検討してみてくださいね。