【獣医師監修】犬の涙やけの原因は?予防法と家庭で対処する際の注意点を解説

犬の涙やけの原因は?予防法と家庭で対処する際の注意点を解説 犬の病気・トラブル

犬の目の周りが涙で茶色く変色してしまう涙やけ。

毛の色が淡いワンちゃんの場合は特に目立ちやすいため、心配になってしまう飼い主さんも多いでしょう。

この記事では主に下記の内容について紹介していきます。

  • 涙やけとは
  • 涙やけの原因
  • 涙やけの原因として考えられる病気
  • 涙やけを起こしやすい犬種
  • 病院を受診すべき涙やけの症状
  • 涙やけの対処法
  • 涙やけの治療法

実は、涙やけは目や鼻に関する病気の兆候ということがあります。

ただの体質と油断せず、必要に応じて病院で相談することも検討しましょう。

この記事の監修者
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武蔵小金井ハル犬猫病院院長
鬼木 真悟 先生
岐阜大学農学部獣医学科卒業。大阪と神奈川の一般動物病院で勤務しつつ、日本獣医生命科学大学臨床病理学研究室研究生、日本大学外科無給研修医を経験。その後、東京でハル犬猫病院開院。日本獣医がん学会2種認定医。複雑な病態でも、できるだけわかりやすくお伝えできるよう、日頃から心がけています。

涙やけとは

犬 涙やけ

涙やけとは涙が過剰に分泌されてしまう、または涙の通り道に異常があり、うまく鼻の方に排泄できない状態の時に起こります。

そうして涙が目から溢れ続けてしまうのを、「流涙症」といいます。

流涙症によって常に目の下が濡れることで、涙の成分が毛を茶色く変色させてしまうのを「涙やけ」というのですね。

涙のしくみ

涙は常に目の表面を潤わせ、外からの刺激から目を守る役割を果たしています。

涙は涙腺から分泌され、瞼にある穴(涙点)から吸収されます。

その後涙嚢、鼻涙管という器官を順に通り、最終的には鼻腔に排泄されるのです。

涙やけの原因

犬 涙やけ

犬が涙やけを起こしている時、考えられる原因は下記の5つです。

  • 涙点・鼻涙管が未発達
  • 老廃物で鼻涙管が詰まる
  • 異物による刺激
  • 涙点の場所が浅い
  • 病気

それぞれ詳しく見ていきましょう。

涙点・鼻涙管が未発達

涙点や鼻涙管がまだ発達の途上であることが、涙やけの原因となる場合があります。

本来は涙点・鼻涙管で涙が吸収されるはずですが、未発達のため吸収量が少なく、生産する涙の量の方が多くなってしまう状態ですね。

この場合はワンちゃんの成長とともに改善していきます。

ただもしあまりに涙の量が多い時には、点眼や鼻涙管洗浄などの処置が必要なこともありますので、動物病院で相談しましょう。

鬼木院長
ハル犬猫病院 鬼木先生

特に、子犬の時にマズルが短かめで、大人になると鼻が伸びてくるような犬種では、成長とともに改善する傾向があるように思えます。

トイプードルや、子犬の時にマズルが短かいダックスフントなどでよくみられます。

老廃物で鼻涙管が詰まる

鼻涙管に老廃物が詰まり、涙の排泄がうまくできなくなることで涙やけを起こすことがあります。

もともと鼻涙管が細い、体質的に涙の粘り気が強いなどの原因から鼻涙管が塞がれてしまうのですね。

外側からのマッサージによって改善することもありますが、鼻涙管洗浄という処置を行わないと良くならないケースもあります。

病院で鼻涙管の詰まり具合を診てもらい、判断するのが良いでしょう。

異物による刺激

例えば長毛のワンちゃんなどは、目元の伸びすぎた毛が目に入ってしまい、その刺激から涙が出て涙やけを起こしている可能性があります。

また人間と同じように、埃などの異物が目の中に入りやすい状態だと、涙が出やすくなります。

こまめに部屋の掃除を行い、生活空間に埃が溜まらないように気をつけましょう。

涙点の場所が浅い

体の構造的に、涙の排泄が苦手な犬種もいます。

そういう体のしくみであるため、老廃物が溜まりやすく、場合によっては定期的な鼻涙管洗浄が有効な手段となるケースもあります。

この後の「涙やけを起こしやすい犬種」の項目でもさらに解説していきます。

病気

涙やけ自体は大した症状ではないように思えても、実は目や鼻の病気の兆候であることがあります。

先天的なものが多く、病院で治してもらう、または症状を緩和させる処置をしてもらう必要があります。

涙やけの原因として考えられる病気

涙やけの原因に考えられる病気って何?

原因として考えられる病気として、下記の4つである事が多いです

  • 鼻涙管閉塞
  • 眼瞼内反症
  • 異所性睫毛(いしょせいしょうもう)
  • アレルギー

順番に見ていきましょう。

鼻涙管閉塞

鼻涙管閉塞は、犬の涙やけの原因として最も多い症状です。

先天性のものでは、生まれつき涙点がなかったり、鼻涙管が狭かったりということがあります。

後天的な場合は、結膜炎や腫瘍、外傷などの影響で鼻涙管が閉塞することで引き起こされます。

眼瞼内反症

眼瞼内反症とは、瞼が内側に反り返ってしまう病気です。

涙が増えるのと同時に、涙点の位置も変わるので排出もされにくくなります。

先天的に起きることが多い病気です。

異所性睫毛(いしょせいしょうもう)

異所性睫毛(いしょせいしょうもう)とは、瞼の裏側からまつ毛が生えてしまう病気です。

眼球に直接まつ毛が触れてしまうことになるので、常に異物が目の中にあるような状態になります。

また、まつ毛が目に向かって生える「睫毛乱生(しょうもうらんせい)」という病気も、同じように眼球が刺激され涙が増える原因になります。

アレルギー

犬もアレルギーを発症することがあります。

ノミ、花粉、食べ物等あらゆるものがアレルゲンになる可能性があり、動物病院でアレルゲン検査をすることで特定できることがあります。

アレルギー症状が目の周りに見られた際には、まぶたや結膜に炎症が広がることがあります。

その際、涙の量が増えたり涙管を腫れさせる結果、涙やけを起こしやすくなります。

涙やけを起こしやすい犬種

涙やけを起こしやすい犬種は?

体の構造上、もともと涙やけを起こしやすい犬種があります。

下記の犬種を見ていくと、涙やけを起こしやすいのは主に小型犬であることがわかります。

トイプードル・マルチーズ

トイプードルやマルチーズは、解剖学的にも涙やけを起こしやすい構造をしていることがわかっています。

涙点の位置からして、涙が鼻涙管に排泄されにくい体のしくみになっているのですね。

また他の犬に比べて鼻涙管が細く老廃物も溜まりやすいため、涙が目から溢れてしまうことが多いのです。

パピヨン・日本スピッツ

犬によっては目頭の毛が目に入りやすい犬種がおり、眼球が刺激されることで涙が多く出る原因になります。

主にパピヨンや日本スピッツなどの犬種が、上記の特徴に当てはまります。

チワワ・ブルドッグ・シーズー・ペキニーズ

チワワ・ブルドッグ・シーズー・ペキニーズなどは、他の犬種と比べて眼球が突出しているのが特徴です。

目元の毛が眼球に触れやすい他、埃などの異物の影響も受けやすいため、涙やけを起こしやすいです。

病院を受診すべき涙やけの症状

ワンちゃんの目に黄色い膿のような目やにが出ている場合、涙の通り道に炎症が起きている可能性があります。

涙嚢炎や鼻涙管閉塞などが疑われますので注意が必要です。

また瞼やまつ毛の異常で眼球が傷ついたり、目が炎症を起こしていたりする場合には、ワンちゃん側にも目に痛みや違和感があります。

目をしばしばさせて痛そうにしている、目がぱっちりと開かず薄目になっている、白目が赤くなっている等の症状がある場合も要注意となります。

これらの症状が認められる時には、早めに病院で診てもらうことをおすすめします。

涙やけの対処法

涙やけの対処法3つ

涙やけしている部分には、涙に含まれる老廃物が付着していたり、細菌が繁殖してしまっていたりします。

簡単にきれいにすることは難しいため、すでに茶色く変色してしまった毛については、カットしてしまうのが確実です。

ただし、目から涙が溢れてしまう原因を根本的に解決しなければ、涙やけは繰り返してしまいます。

動物病院で早期治療を始めることで、ワンちゃんの治療の負担も少なくなるでしょう。

涙やけの予防

目元の毛が眼球に触れてしまうのが原因の場合、目の周りの毛を切ってあげることで予防することができます。

また、目の周りの涙をこまめに拭き取ってあげることで、茶色く変色してしまうことを予防できます。

強くこすってしまうと皮膚を傷つけてしまう恐れがあるため、ティッシュやコットン等で優しく拭いてあげましょう。

炎症を伴わない流涙症の場合は、体の構造上の問題や先天的な異常が原因となっている場合が多いです。

その場合家庭での対策は難しいため、動物病院で獣医師に相談しましょう。

涙やけにはフードが影響している場合も

一説によると、ドッグフードに含まれている色素や添加物が、涙の成分に影響を与えて変色を起こしやすくしているといいます。

一度、普段与えているフードの成分表示などを見直してみるもの良いでしょう。

ドッグフードにも涙やけや目元もトラブルの改善をうたう商品があります。

必要に応じて切り替えをし、普段のフードから体質改善をサポートしていくもの一つの方法です。

市販のケアグッズを使う際の注意

涙やけによる毛の変色を目立たなくする薬品などは市販でも入手できます。

しかし、そういったケアグッズを使っても着色してしまった毛は簡単にはきれいになりません。

反対に、強い漂白効果のある薬剤を頻繁に使いすぎると皮膚がダメージを受けてしまうことも。

多少涙やけを目立たなくさせることはできても、根本的に改善させる効果はないことは理解しておきましょう。

涙やけの治療法

涙やけってどうやって治療するの?

涙やけの原因ごとに、病院ではどのような治療が行われるのかを紹介していきます。

中には外科手術を必要とするケースもありますので、獣医師と相談して治療方針を決めていきましょう。

鼻涙管閉塞の場合

鼻涙管が狭く物が詰まっていることが原因であれば、鼻涙管洗浄という処置を行います。

その際は麻酔を使用し、鼻涙管に細い管を通して詰まりを取り除いていきます。

もし生まれつき鼻涙管が閉塞している、もしくは涙点がないという場合には、手術によって矯正できる場合もありますが、特殊な手術になるため眼科専門病院などを受診する必要があるかもしれません。

原因が結膜炎等の場合は、主に目薬を使っての治療になります。

鬼木院長
ハル犬猫病院 鬼木先生

鼻涙管は非常に細い管なので、動物が動いてしまうと洗浄用カテーテルを挿入する事ができません。

不動化する目的で、通常は全身麻酔下で実施します。

鼻涙管洗浄後に症状が改善することもありますが、すぐに再発してしまうケースも比較的多い印象です。

異所性睫毛の場合

まつ毛の異常が原因で起こる涙やけの場合は、眼球に接してしまうまつ毛を抜きます。

また必要に応じてまつ毛の毛根を外科的に除去し、再発しないよう対策します。

眼瞼内反症の場合

眼瞼内反症の場合、反った瞼を矯正するために外科手術を行います。

異所性睫毛のように、眼球に触れてしまうまつ毛を抜くことで一時的には改善することも可能です。

しかし将来的にはまたまつ毛は生えてしまうので、手術で根本的な改善を目指すほうが負担は少なくなることがあります。

アレルギーの場合

アレルゲンが花粉やハウスダスト等の場合、アレルギーを抑える薬を投与して症状を緩和します。

アレルゲンが食べ物の場合は、食事の内容を変更することで改善できることがあります。

普段食べているフードの原材料や成分などを考慮し、獣医師と相談して食事内容を工夫していきます。

鬼木院長
ハル犬猫病院 鬼木先生

アレルギーが関与している場合は、原因を見つけてそれを避けることが対策であり、根本解決に繋がります。

ただし、残念ながら特定に至らないケースもよくあり、その場合は対症療法として、お薬で症状を緩和していくこととなります。

根本的な解決のためには病院で検査を

犬 病院

涙やけの改善には、こまめな毛の手入れや市販のケアグッズの使用、フードの変更等様々な方法があります。

ただ、何が原因で涙やけを起こしているのかはワンちゃんによって異なります。

原因が違えば対処法ももちろん変わってくるもの。

原因に対応していない対処法に取り組んでも、大きな効果は得られないでしょう。

効果的に涙やけを改善するためには、まずは原因を特定することが大切になります。

病院での治療が必要ならそのまま獣医師と相談、家庭で対処可能だとわかればアドバイスをもらって原因に対応したサポートをしてあげられます。

何より原因が病気だった場合は、早期発見と早い段階からの治療が重要です。

正しいケア方法を知るためにも、まずは動物病院で原因を特定してもらうことをおすすめします。

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