人間と同じように、犬もくしゃみをすることがあります。
くしゃみをすること自体は生理現象ですから、特別に不思議なことではありません。
しかし、くしゃみを引き起こしている原因やくしゃみの回数、一緒に見られる症状などによっては、何かしらの病気の兆候である可能性もあります。
この記事では主に下記の内容について紹介していきます。
- 病気以外で犬がくしゃみをする2つの原因
- 犬がくしゃみをする時に考えられる4つの病気
- 病院を受診すべき症状の特徴
問題のないくしゃみと体の異常が原因のくしゃみ、それぞれの特徴について把握し、適切な対応をしてあげられるように備えましょう。
病気以外で犬がくしゃみをする2つの原因
病気以外の理由で犬がくしゃみをする原因は主に下記の2つです。
- 異物による刺激
- アレルギー反応
原因ごとに対処方法も変わってきますので、何がくしゃみの原因となり得るのかと、少女の特徴について把握しましょう。
異物による刺激
鼻の中に異物が入ると、それを輩出しようとしてくしゃみが出ることがあります。
くしゃみが止まらない時は、鼻の中の異物をなかなか外に出せないでいる時かもしれません。
異物というのは、例えば植物の一部や食べ物のかけらなどですね。
長い間異物がとどまり続けると鼻粘膜で炎症を起こすことがあり、鼻血が出たり食欲不振に陥ったりすることもあります。
動物病院で内視鏡などを使って異物を取り除いてもらうことで、症状は改善するでしょう。
その後はまた異物に悩まされることがないよう、生活環境をきれいに整える等対策をしてあげましょう。

動物はしゃべってくれないので、異物の鼻腔内への混入は発見しづらいものです。そして、動物は私たち人間より外鼻孔が狭いので、混入したものが外の排出されにくいという特徴もあります。
よくつまるものとして、食べ物のカスや、飲み薬(特に粉薬)があげられます。内視鏡で確認できる場合は確認しますが、体格により難しいことも多いため、多くの場合は外鼻孔より生理食塩水を注入し、口腔内に排出させます。
うまくできれば症状は劇的に改善します。
臭いや煙による刺激
犬は非常に嗅覚が優れた動物なので、臭いに対して敏感に反応してしまいます。
そのためタバコ、香水、お香、香辛料、殺虫剤など、刺激の強いにおいを感じるとくしゃみが出やすくなるのですね。
こういった強いにおいのものは、できるだけワンちゃんに近づけないように配慮してあげましょう。
また、消臭・脱臭機能のある空気清浄機などを稼働させておくと、くしゃみを改善できることがあります。
アレルギー反応
人間と同じで、犬もアレルギーを持っていることがあり、よく見られるアレルギーには、スギやイネ科の植物、ハウスダストなどがあります。
アレルギーが原因のくしゃみであれば、鼻水が一緒に出ていることが多いです。
その際の鼻水は、基本的には透明で水っぽい形状をしています。
ハウスダストは1年を通して触れる機会が多いので、原因がハウスダストの場合は慢性的にくしゃみと鼻水の症状が出るでしょう。
一方で植物がアレルゲンの場合は、その植物が生えている特定の季節に限定して症状が出やすくなります。
犬がくしゃみをする時に考えられる4つの病気
犬がくしゃみをする時に考えられる病気は、主に下記の4つです。
-
- ケンネルコフ
- 歯周病
- 鼻腔内の炎症・腫瘍
- 鼻炎
くしゃみを引き起こす病気というと鼻に異常があるイメージですが、実は鼻以外の部分に問題が生じているケースもあります。
可能性のある病気とその特徴について紹介していきますので、ワンちゃんに当てはまる症状が出ていないかチェックしてみてください。
ケンネルコフ
ケンネルコフとは犬伝染性気管支炎とも呼ばれる病気です。
人間でいうところの風邪のようなものですね。
成犬の場合は発症しても食欲などはそのままで、日常生活を送る分には問題ないことも多いです。
症状としては乾燥した短い咳、くしゃみ、微熱などを伴います。
咳に関して詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
ただ、ウイルスや細菌と複合感染した場合は鼻水が黄色くなったり、元気がなくなったりという症状が出ることもあります。
特に子犬は抵抗力が弱いため重症化しやすく、生後6週~6ヶ月の犬は特に発症しやすいとされています。
また飼育環境による影響も大きく、たくさんの犬が密集して暮らしているような環境では発症の可能性が高まります。
混合ワクチンを接種することでの予防が効果的です。

ケンネルコフはペットショップから自宅飼育への切り替え時によく起こります。
一種のストレスによるものですが、こればかりは仕方ありません。誰だって生活環境が変われば体調を崩すことはありますので。
ケンネルコフに対してはインターフェロンの投与や抗菌薬での治療を行うことが一般的です。長く続く場合は、ネブライザーなどの吸入治療が必要になるケースもあります。
犬の風邪は人へうつらない
ケンネルコフは風邪のようなものだと解説しましたが、だからといって人間に移るようなことはありません。
ケンネルコフは、犬ジステンパーウイルスや犬ヘルペスウイルスなどのウイルス感染。
気管支炎敗血症菌(ボルデテラ菌)のような細菌感染。
マイコプラズマ属菌などが原因で起こるものです。
これらは人間の風邪を引き起こすものとは種類が違うため、犬の風邪が人間いうつることはなく、また人間の風邪が犬にうつることもないのです。
歯周病
くしゃみと歯周病は全く関連性がないように思えますが、実は犬は歯周病が原因でくしゃみをしていることが非常に多いです。
特に注目すべきは上あごの犬歯です。
犬歯というのは犬の歯の中でも元も大きい歯で、それを支えている歯根が他の歯と比べて深いのが特徴です。
歯周病が進行すると歯根の尖端まで細菌が感染し、それが鼻腔にまで到達することがあります。
さらに重症化すると歯を支える骨まで溶かしてしまうこともあり、その結果口の中と鼻腔が「後鼻瘻管」という穴でつながってしまうのです。
こうなると、食べたものや飲んだものが鼻孔に入り込んでしまうようになります。
結果として鼻腔に炎症を起こす、または異物によって常に鼻腔が刺激されているような状態が続き、くしゃみや鼻血がよく見られるようになります。
歯周病の治療
犬の歯周病の治療は、基本的に手術によって行われます。
犬は治療中、口を開けておとなしくしていることが難しいため、全身麻酔をして手術を行います。
治療の内容としては、歯石を取り除くスケーリングという作業を行った後に、必要に応じて抜歯を行います。
その後歯周ポケットの中をきれいにし、今後歯垢がつきにくくするために歯の表面を研磨します。
基本的に入院は必要ありませんが、自宅で抗生物質や消炎剤を飲ませてあげる必要があります。

犬の特に犬歯(牙の歯)の根本は鼻にほとんど通じています。なので、歯の問題は鼻につながりやすいという傾向があります。
その中でも特に、ミニチュアダックスフンドなどの鼻が長く、歯が大きい犬種は問題を抱えやすいといえます。
歯周病を抱えていては、いくら鼻炎の治療をしても良くならないということも考えられます。高齢で歯に汚れが溜まってきている子は要注意ですね。
また再発防止のためには、自宅でも積極的にデンタルケアを取り入れることが大切です。
鼻腔内の炎症
鼻腔内に炎症が起きると、くしゃみを起こしやすくなります。
炎症を引き起こす要因の一つが病原体の感染で、細菌、真菌、ウイルスなどが考えられます。
特に「アスペルギルス」や「クリプトコッカス」という真菌の感染が、くしゃみ・鼻水の症状を引き起こします。
原因に応じて抗生物質や抗真菌薬などを使用することで改善を期待できます。
鼻腔内の腫瘍
鼻腔に腫瘍やポリープができた場合も炎症の原因となります。
これらは抗生物質や薬では改善しないことが多く、外科手術による摘出が効果的です。
手術は、頭部のレントゲン検査やCT、MRIなどの画像診断を行って腫瘍の大きさを確認した後に行われます。
細い内視鏡を使う手術であれば体絵の負担を最小限にとどめることができるでしょう。
もし悪性腫瘍で外科手術ができないような場合は、放射線治療が行われることもあります。
鼻炎
鼻炎の症状では、はじめはさらさらとした形状の鼻水が出ます。
ただ症状が悪化すると粘り気が出てきたり、膿が混ざるようになったり、鼻水に血が混ざることもあります。
鼻炎の原因は病原体の感染、アレルギー、鼻腔内の腫瘍など多岐にわたりますが、人間のように花粉症でくしゃみや鼻水が出るケースはほとんどありません。
また、鼻炎が慢性化すると逆くしゃみの原因となることもありますので注意が必要です。
逆くしゃみとは
くしゃみと名前が似ている症状で「逆くしゃみ」というものがあります。
逆くしゃみは、喉の奥の鼻咽頭尾端部という部分の粘膜に刺激が加わることで起きます。
急激な息の引き込みを起こすもので、息を思いっきり吐きだすくしゃみとは逆の行為だと言えます。
行動自体はしゃっくりに似ていて、「ヒック」というような音がすることがありますが、しゃっくりの場合は横隔膜のけいれんが原因です。
逆くしゃみが命にかかわるような重大な病気に発展することはまずありません。
しかし、勢いよく空気が移動することで気道の粘膜に強い刺激が加わると鼻血が出ることもあります。
多くの場合1分ほど容姿を見れば落ち着きますが、食欲不振や元気がない様子が見られる時は念のため病院で検査を受けることをおすすめします。
くしゃみとの違い
くしゃみは勢いよく息を吐く行動なのに対して、逆くしゃみはその名の通り勢いよく息を吸い込む行動です。
やっていることは真逆ですが、この2つを見分けるのは慣れていないと難しいです。
逆くしゃみの方は「フガッ」というような、豚の鳴き声のような音を発することがあります。
くしゃみと違って息を吸い込んでいるので、同時に鼻水が出ることはありません。
また逆くしゃみは、チワワやパピヨンの若い犬によく見られることがわかっています。
犬種にかかわらず、成長に伴って頻度は減っていく傾向にあります。
もし逆くしゃみの回数が気になったり、症状が悪化していたりする場合は病院で相談してみましょう。
何か治療が必要な病気が、引き金となっている可能性もあります。
病院を受診すべき症状の特徴
くしゃみ自体は生理現象として自然に起こることです。
しかし、あまりに頻度が多かったり、長時間治まらなかったりする場合は、体の異常が原因であることが考えられます。
ここからは病気が原因のくしゃみを見分けるためのポイントについて紹介します。
ワンちゃんの症状と照らし合わせて、該当するものがないかチェックしてみてください。
食欲不振が見られる
くしゃみと合わせて食欲不振の症状が見られる時は要注意です。
犬は匂いで食べ物の味を判断しているところがあります。
そのため、鼻づまりによって嗅覚が低下すると、ご飯をおいしいと感じられなくなり食欲が落ちるのですね。
粘り気の強い鼻水が鼻の奥に溜まっている可能性がありますので、場合によっては動物病院で除去してもらう必要があります。
鼻水に異常が見られる
鼻水に血が混ざっている、黄色くなっている、粘り気が強い、などの特徴が見られる時は、何かしらの病気が原因である可能性が高いです。
粘り気が強く色の付いた鼻水の場合は、鼻腔内に炎症が起きている兆候のことがあります。
さらに血が混じっているようなら、症状はかなり重症化しているかもしれません。
また鼻水が左右非対称で出てくる時は、腫瘍やポリープができているか、何かしらの異物が原因となっていることが考えられます。
いずれにしても、できるだけ早く病院で検査を受け治療してもらうようにしましょう。
くしゃみ以外にも異変が出ていないか確認を
犬のくしゃみの原因は様々ですが、くしゃみ以外に変わった様子がない場合は基本的に様子を見て大丈夫でしょう。
ただし、くしゃみと合わせて紹介したような症状が現れている時は要注意です。
何かしらの重大な病気のサインとして、くしゃみが引き起こされている可能性もあります。
最適な治療を行うためにも早めに病院で検査を受け、まずはくしゃみの原因を特定しましょう。
病気の早期発見ができれば、ワンちゃんの治療の負担軽減にもつながります。
くしゃみ以外にも、犬の病気に関する記事を解説しています。
興味のある記事があれば、ぜひご覧ください。
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